新編世界むかし話集(1)イギリス編
「ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。
これまで家庭で語られていただけの昔話が、今日のように文化的宝と認められるようになったのは、グリム兄弟の『家庭と子供のための童話集』の刊行によるところが大きい。
本書は「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」などのグリム童話を中心に、オーストリア、スイス、オランダ諸国の昔話を多数収める。
他のゲルマン諸国では、神話詩や英雄伝説がキリスト教の影響で失われたが、北欧ゲルマン人はすこぶる詩歌を愛し、それが語り伝えられている。
北欧の民話が豊かであるのは、そのような伝統を受け継いでいるからである。
早くからギリシャ・ローマ文明に触れ、常にヨーロッパの先進地域であったため、フランスは洗練と、世界伝播の揺籃となる。
1697年にペローが昔話集を出すに及んで、世界ははじめて昔話の楽しさを認識するに至った。
この地域は民族的、文化的に入り組んでいて、しかもアジアに近く、昔話はどこか土俗的かつ素朴で、狡猾な機知があり、またオリエント風の怪奇や華麗な幻想性も現わしていて、ふしぎな謎を秘めているものが多い。
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